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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


光秀と初めて会ったのは、人さらいに会った時だ
湖の記憶の中では、人さらいから助けてくれた十兵衛…それが、初めての出会いだ

「みつひでさまは、はじめてあったときより…なんだか、いじわるそうにみえる…じゅうべいさん、ってなまえをおしえてくれたときは、やさしそうにみえたけど」

(こんなふうに、いじわるそうにわらってなかった。このひとのわらいかた…よくわからない…)

「……そうか…」

その指摘に、目を瞬かせ間を置いた光秀
湖をじっと見れば、その瞳が自分の奥を覗くようにこちらを見ているように思え視界を外した

「面白い事を言う」
「湖、確かにこいつは意地悪い。何かあったら、俺に言え」

秀吉はそんな事を言った湖に苦笑しながら、自分の胸を叩く
そして、思い出したように懐から小瓶を取り出した

「お。忘れるところだった…湖、ちょっと来い」

ちょいちょいと秀吉が手招きをするので、今度は四つん這いではなく立ち上がって歩いて行く湖
今度は、幸村も止めはしなかった
秀吉の側に行けば、握られている小瓶に目を向け…

「わぁ…っ」
「ほら。土産だ」
「これ、こんぺいとう?!きらきらしてるっ」

秀吉から受け取った小瓶を、差し込む陽の光に当てるように瓶をつまむ湖
それは初めて食べた真っ白な金平糖とも、三成からもらった色つきの金平糖とも違う
もっと小ぶりで、透き通った桃、黄、緑、白、紫…と色数の多い粒だった

「三成からお前が金平糖で喜んだと聞いてな。なかなか珍しい物なんだぞ」
「すごい…きれいっ!これ、たべれるの?」
「食べられるぞ、食べてみろ」
「え…?湖、もらって良いの?」
「土産だと言っただろう?」

ぽんぽんと、頭を撫でるように叩く秀吉の仕草
それは、すごくくすぐったく、暖かい動作で湖は満面の笑みを浮かべた

「ひでよしさま、ありがとう!!」

ふわりとほころぶ笑みと共に、秀吉の鼻を掠るのは…湖の香りだ
甘い花の香り
久しく感じなかった懐かしくも、記憶に鮮明なあの香り

チリリン、リン…

鈴の音を上げながら、湖が謙信と信玄の方を向き金平糖を見せている
秀吉はその体に一瞬手を伸ばしそうになった
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