第17章 かごの中の鳥(裏:政宗)
「酷いよ・・・政宗・・・」
ひっくひっくと肩を揺らし、細めた目で政宗を睨む湖
その湖を目のあたりにして、政宗はやり過ぎたかと声を詰まらせた
着物を前にかき集め、顔を背けた湖に政宗はしまったと感じる
湖と両思いだとわかり、「仕置き」に浮かれ今までより酷なことをしたかも知れない
そう思ったのは、湖に今しがた睨まれた後
「っ、わるい・・」
湖は、政宗から顔を反らして居たが、その小さな声は耳に入った
(・・・悪い?・・・え・・・)
聞き間違いじゃ無いかと、振り向けば・・・
そこに立つ政宗の表情は、初めて見る物だった
いつもの自信に溢れた表情ではない
まるで、叱られて途方に暮れたこどものような顔
(ま、まさむ・・・ね?)
湖が、驚きの表情を示したことに政宗は気づかない
「・・少々悪戯がすぎた・・悪い」
「っ・・」
しばしの沈黙が訪れ、湖はその間じっと政宗を見つめていた
一方の政宗は、湖から顔を反らし、湖の表情は見えていない
そんな状況に先に折れたのは、湖だった
「・・・明るい時間に・・目隠しされて拘束されて・・」
「・・・あぁ」
「・・・政宗・・」
「なんだ」
「政宗・・・私のこと道具にしてるの?」
「っな・・?!」
そこで政宗は、湖との間合いに初めて気づく
湖の方に向き直れば、鼻先にその顔があった
そして、その表情にも
「お前・・」
湖は、にこにこと笑っていた
「・・・驚かすな」
「ふふ」
ちょんと、掠めるだけの口づけを政宗と交わす
「途方にくれたこどもみたいな表情だったよ・・・仕方ないから許してあげる」
「・・・っくそ・・」
がしっと湖の肩を掴むと乱暴に自分の胸にその顔を押しつける
政宗は、顔を見られたくなかったのだろうが
湖の耳に入る心音は、いつもより早く
それを聞いていると、さきほどの恥ずかしい思いすら薄れるようだった