第8章 敵陣の姫 (裏:謙信)
気を失って、強ばりの溶けた体を謙信はゆっくりと撫でる
そして、一息つくと
自分と湖の汗を流し上がった
さっと衣を身につけると、湖の体を丁寧に拭き真新しい寝衣を身につけさせる
先ほどこの寝衣を持ってきた記憶は無いが、誰が持ってきたかは検討がつく
着替えさせたあと、廊下に向かって声を掛けた
「佐助」
「・・・・」
呼ばれて出てきた男はどこか不機嫌そうに言った
「謙信様、湖さんは治療中です・・・無理はさせないでください」
「・・・あぁ」
了解したともしないともいえる返事をし、謙信は佐助に湖を任せ部屋に戻っていく
残された佐助は、湖を大事そうに抱えるとため息をついた
「湖さん・・・困った人たちばかりに気に入られるね、君は・・」
春日山城へ向かう前日の出来事だった