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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


これ以上曲がらないだろうくらいの首の傾げた湖
周りの大人達はため息が出る

「…そう言えば、君は自分の香りには気付いてなかったんだな」
「それを言うなら、外見的なものにも無頓着だっただろ」

それは、今の湖も、こどもになる前の湖の事も合わせて言えることだった

くぅぅ~

小さな音が部屋に響いた

「あ。ととさま、お腹空いた」

湖の腹の虫の音だ
えへへっとはにかみ笑いの湖の頭をぐりぐりと撫でると、リンリンと鈴が音を鳴らす

「…まぁ、腹が空くのは良いことだ」

四人は宿場を出ると、小さな茶屋に入った
本当に小さな茶屋で、簡単なものしか用意出来ないと言うが今はそれで十分だ

「茶を四つ、団子を三つ」
「ととさま、私二つ食べるー」
「お前、朝も食ったろ?大丈夫なのか?」

その「大丈夫」は、食べきれるのかという意味だ

「大丈夫、幸。水遊びしたら、お腹減ったんだもん」

湖の着物は着替えて替わっている
桃色の着物に、紺色の袴
髪は、一つに括り、桃色の髪飾り紐で縛られている

運ばれてきた団子をもぐもぐと美味しそうに頬張る姿を見ながら、幸村が言った

「武士の子って感じだな…」

こどもになる前の湖から感じたことはない印象だ

「確かに、この格好だとそう見える。でも幸、十二だからね。これから落ち着いてくる。色々と…」
「色々ってなんだよ?」

こどもは、男女問わず元気なものだ
そして、思ったままに行動してしまう
それが、落ち着けば…

「だなぁ。十五になれば、少し印象が変わってくるかもな」
「ほーえば、あづちのみーなはくうの??」

茶をすすりながら信玄がそう言えば、思い出したかのように口に団子を詰め込んだままで湖が話し出した

「…気に食わぬが、全員首を揃えてくる」
「ん。謙信さま、その言い方なんだか物騒だよ?」
「協定が無ければ好機会、全員斬ってやった」
「けんしんさまー、安土とは今はお友達なんでしょ?やだよ、私、喧嘩は」

湖が言えば、喧嘩なんて可愛らしいものだが
実際は、上杉武田軍と織田軍は対立関係だ
湖の事があり、致し方無く和睦協定があるものの期間限定のものなのだから
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