第28章 桜の咲く頃 四幕(十二歳)
「し、信玄殿。冗談を言わないでくだされ…」
(白粉殿の妖気、土地神様同様何というかおどろおどろしい気配で…)
「おい、猫…お前、それ止めろって」
(これを本気で向けられればたまったもんじゃ無いっなんで、猫娘は平気なんだよ)
「あと半月後、また登竜桜に会う。そこで聞けば良い。それまでは、様子見でいいだろう」
謙信がそう言うと、皆が頷き、湖も「はーい」と手を上げたのだった
十二歳の時間は短い
初めの五日は寝込み、次は生理痛で寝込み、残り十日もすれば、また登竜桜の地に向かうはずだった
ツグミが飛んでくるまでは
「祝いなら万全で飲ませろ。あと半月後に来い……おかか様、貴方は本当に…」
キュイキィ
呆れと心配を含めた顔で白粉が手紙を畳むば、返事をするようにツグミは一鳴きし白粉の肩から飛び立っていった
「んと…かかさま?湖は、えーっと、あと一ヶ月くらい十二ってこと?」
「そうゆう事だ…湖、お前…何度「お守り」を使ってる?」
十二で春日山城に戻った湖
初めはほとんど寝込み、信玄の具合を確認する事も出来ずに居た
だが、動けるようになって数日
様子をみれば、信玄のあれはまだ煤色程度
「まだ使ってないよ」
「…ならば、大丈夫か…謙信達に伝えてくるが、一緒に行くか?」
(一ヶ月弱でまだ残り三度…問題ないだろう)
「私、十二歳が長くなるなら兼続にお願いしたいことがある。かかさま、兼続のところに連れて行ってくれる?」
「そうか。構わない」
城内を謙信の居る方へと連れだって歩き出した二人
白粉は匂いで兼続の場所を探り、湖をその場に残すと謙信の元へと向かった
「して、お願いとは。なんでございましょうか?」
「お願いの前にね。かかさまが今、謙信さまにお話に言ってるんだけど…」
と、登竜桜の文について兼続に説明した湖
そして続けて
「あと一ヶ月あるなら、今度は馬で遠出をしたいの。だから、兼続。私に課題をください」
「……なぜゆえですか?」
「…なにが?」
困惑する兼続
そして、こちらも「あれ?」と困惑する湖
「馬で遠出なさりたいというご希望は許可を別とし解りましたが、なぜに課題なのですか?」