第2章 悪魔の王
悪魔の国の王アダマンド様。
艶やかなウェーブがかった長く黒い髪に、血のように真っ赤な瞳。肌は陶器みたいに滑らかで白くて、彫りが深く整った容姿はまるで外国のモデルみたいでとても綺麗。
きっと街を歩けばスカウトや女性の黄色い声が凄いことだろう。
でも、彼の頭には二本の角がある。その角は羊の角のように湾曲していてでこぼこしている。太くて重そうな立派な角だ。
彼は召し使いに私を風呂へ入れさせると、真っ黒のドレスを着せた。私に似合うかどうかはおいておいて、膝丈のスカートはレースたっぷりでふんわりしていて可愛らしい。
体に何かの液体を塗り込まれて、首辺りまで伸びた緩くカールのかかった髪は丁寧にすかれた。寝起きなんかはあちこち跳ねまくる柔らか過ぎて面倒な金の髪も、今は落ち着いている。
金髪に白い肌、目は鈍い青色。私はハーフらしい。小さい頃に捨てられたので詳しくは分からない。でもお爺さんとお爺さんに拾って育てて貰ってとても感謝してる。
召し使いの人に先導されて歩く。何だか良い匂いが香ってきた。廊下を抜けて外に出た中庭には、綺麗な花が咲き乱れていた。
良い匂いは花の香りだったみたい。
「わぁ!」
色とりどりの花が溢れる光景に思わず声を上げると、ククッと喉を鳴らす音が聞こえた。
「、気に入ったか?」
そこに居たのはアダマンド様だった。召し使いの人はアダマンド様をみとめると、頭を下げて後ろに控えた。代わりに彼が私の手を取りゆっくりと歩き出す。
「はい、とても綺麗ですね」
「…そうだな、綺麗だな」
アダマンド様がじっと私を見詰めている。その視線とぶつかって彼が花を見ていない事に気付いて首を傾げた。
「も綺麗だ」
そんな事を言われて恥ずかしくなってしまった。顔が熱くなって視線を下げると、アダマンド様が楽しそうに笑った。
「菓子は好きか?そなたの為に用意させた」
そう言って案内された庭の奥には西洋風の東屋、ガゼボの様なものが有った。そこに白いテーブルと椅子、テーブルには美味しそうなお菓子が沢山、溢れんばかりにのっていた。
「甘いものは大好きです。アダマンド様、有り難うございます」
人間界の暮らしは裕福ではなく、日々の食事が精一杯だった。だからこんな沢山のお菓子に囲まれるのは初めてで、私はアダマンド様の気遣いがとても嬉しかった。