第3章 獣の王
「、良く来たな」
転移装置から出ると、犬…じゃ無くて狼のラウルフ様が出迎えてくれた。回りにいる人も頭を下げてくれる。
凄い、狐さんや兎さん、猫さんにライオンさんが服を着て二本足で立っている。その部屋は動物園以上の見応えが有って私は目を輝かせた。
「ラウルフ様、宜しくお願い致します」
頭を下げると満足そうに頷いたラウルフ様がフンフンと鼻を鳴らした。そして嫌そうに鼻の頭に皺を寄せた。
「悪魔臭い。とにかく風呂入って着替えろ。サナ、手伝ってやれ」
「はい!ラウルフ様!」
サナと呼ばれた白くて可愛らしい兎さんが私の前に来て頭を下げた。
「様、サナと申します。宜しくお願いします」
「ここにいる間、サナがお前の面倒を見る。何かあればこいつに言え」
何でもお申し付けください、と赤い目を細めて笑った兎さんはとても優しそうに見えた。アダマンド様の所の召し使いの事が頭をよぎって少し不安になったけれど、この兎さんなら大丈夫かな?
「宜しくお願いします、サナさん」
「サナで良いですよ。様はラウルフ様の奥様なんですから」
そう言って笑うサナに私も笑みを返した。
獣の国の王ラウルフ様。
光の加減で銀にも見える毛並みに深い青色の瞳。お顔は狼で手も足も毛むくじゃら。ピンと立った二つのお耳が立派だ。体がとっても大きくて尻尾もフサフサで、でも二本足で歩いて言葉も喋るしまるで人間みたい。
実際の狼は見たこと無いけれど、毛が凄く艶々していて他の動物さんと違って高貴で神聖な雰囲気がある。
獣の国の人達は魔力は少ないけれど、力が強く武術にも優れているとお爺さんに教えてもらったのを思い出した。
「わぁ、凄い!温泉?」
案内されたお風呂は桧造りでとっても良い香りがした。温泉なのだろうか湯が白く濁っている。
「凄いでしょう?獣の国は温泉も沢山あるんですよ」
サナが遠慮する私を強引に洗って、マッサージまでしてくれた。一息ついて温泉に浸かると何とも言えず気持ちいい。
「様にはここを好きになって貰わないと。だって出来るだけここにいて貰ってラウルフ様のお子を沢山産んで頂かないといけないんですから!」
私頑張ります、と意気込むサナに私は頬を染めたのだった。