第6章 蜥蜴の王
「カサドラさん!カサドラさん!」
私は這ってカサドラさんが落ちた場所まで移動した。そして身を乗り出してカサドラさんを探す。
「カサドラさん!!」
もしかしたら、まだ無事で居るかもしれない。私は自分の体が落ちそうになるのも構わずに、必死で身を乗り出して手を伸ばした。マグマの熱気が私の肌を焼く。
「!」
もっと奥を見ようと身を乗り出した所を抱き上げられた。
「!!」
ギュッと力強く抱き締められたフワフワの感触。それが誰なのかに気付いて私は我に返った。
「ラウルフ、様…」
「…」
ラウルフ様が私を強く抱き締めていた。ラウルフ様の姿は土だらけで汚れていて、血も出ているのか自慢の毛が所々血で固まってしまっていた。
「…良かった…生きてて、良かった…」
ラウルフ様の目に涙が浮かんでいた。あの強くて皆に慕われている獣の国の王様が、私を抱き締めて泣いている。
私はラウルフ様を抱き締め返した。
私はラウルフ様に抱かれて穴の外へと出た。
「っ…」
私を見て駆け寄り飛び付いて来たのはルナール様だった。透明の大きな瞳からボロボロと大粒の涙を零している。
「、良かっ、た!」
「ルナール様…ご心配を、おかけしました」
ルナール様の頬へと触れた。ルナール様が泣きながら微笑む。
「ったく、何してるのさ。手間かけさせないでよね?」
「…そう言いながら、蝶から連絡が入った後、食事も取らず寝もせずに蜥蜴の棲家を探したのはそなたであろう?」
「そ、れは…」
見てみると、アダマンド様の言葉に慌てているキリヤ様の目の下にくまが出来ていた。アダマンド様も何処か疲れているように見える。
「、良かった…」
アダマンド様が綺麗なお顔を緩めて微笑んだ。皆、疲れていて汚れていて、どれだけ私の為に頑張ってくれたかが分かる。
────もっと自分に自信を持てよ。んで、王達を信じてやれよ…
不意にカサドラさんの言葉を思い出した。
ねぇ、信じても良いのかな?ううん、私はこの人達を信じたい。
子供を作るだけの関係じゃ無い。心から繋がる事が出来る家族になりたい。
私はこの人達の子供を産みたい。
心からそう思った。