第6章 蜥蜴の王
「…………」
目が覚めた。そこは檻の中ではなくて、何処かの部屋だった。綺麗に整えられていて、キドラさんの部屋とは違って、物も少ない。
その部屋のベッドで私は目を覚ました。
足がズキズキと痛む。それに体が凄くだるい。私は気を失う前に起こったことを思い出して体を震わせた。自分の足から吹き出る沢山の血、地面に転がる足…起き上がろうとして、上手く起き上がれず体を支えた手がシーツで滑ってまた倒れてしまった。
体が何だかおかしい。
私はシーツを捲ってみた。
「っ……」
目に映った光景に、言葉を失った。何故なら私の両膝から下の足が無かったから。血は止まって皮膚は再生していたのだけれど、足は生えてはいなかった。
どうやら、私の強化の力も限界みたいだ。
これじゃ、歩く事も走る事も出来ない…逃げられない。
私は力無くベッドに倒れ込んだ。まだ足が痛むし、体が凄く熱っぽくてだるい。私は気を失う様にして眠りに落ちた。
音がして目が覚めた。目に映ったのは、机の前で書き物をしていたのだろう、落ちたペンを拾い上げているカサドラさんだった。
カサドラさんはペンを拾い上げると、難しい表情をして何やら真剣に紙へと文字を書き込んでいた。
ここはカサドラさんの部屋なのだろうか。
思い浮かんで体が強ばった拍子にベッドがギシリと音を立てた。その音に気づいて振り返ったカサドラさんと目が合った。
「っ…」
私は反射的に逃げようともがいた。足が無くて起き上がることが出来ないから、体を反転させて俯せになると手の力で距離を取ろうとベッドを掻いた。
「っ、危ねぇ!」
ベッドから落ちそうになった私を、カサドラさんが抱きとめた。捕まってしまった。度重なるカサドラさんの私への酷い扱いに、怖くて怖くて…私の体はカサドラさんを見るだけで恐怖に震える様になってしまっていた。
「止め、て…止めて、下さ…」
逃げた仕置きに鞭を振るわれるのか、それともまた交尾をさせられるのか。もしかしたら今度は腕を切り落とされるかもしれない。私は怖くて怖くて仕方が無かった。
震えて涙を流す私を目にしたカサドラさんが眉を潜めた。気分を悪くさせてしまっただろうか、酷い事をされるのだろうか。
「ぁ、ごめ、なさ…」
叩かないで、酷い事をしないで。涙を流して震える私を、何処か悔しそうな表情でカサドラさんが抱き締めた。