第6章 時の流れに身を任せ・・・・・・
『よかったですね!!』
心からそう言えたと言えば嘘になる。
出来る限りの笑顔でそう言った。
「今まで世話になった。恩に着る。」
そう言うと、トラファルガーさんの姿は光に包まれ消えていった。
一言、
「時の流れに身を任せろ。記憶は風化する。」
涙が頬を伝うのが、その時はっきりとわかった。
私はトラファルガーさんにとって何だったのだろう。
家の大家?
患者の一人?
都合のいい人?
こんなにも人を恋しく思ったのは初めてだった。
『好き。・・・・・・だったのかな・・・。』
長らく忘れていた気持ち。
消えていた気持ち。
今になって気づいても・・・・・・
何もかも
手遅れだ
涙は枯れることなく流れ続けた。