第5章 過去
「 起きて。起きてよ。燐ちゃん。起きないと、殺しちゃうよ?」
物騒な物言いに私は目を覚ました。
目の前に、母さんと父さんの体が横たわっていた。
赤黒く、光沢が少し窺えるものがフローリングの床に広がっていた。
血だ。
大量の、
血。
その傍らには、先程の声の人物が笑顔で立っていた。
片手には血のこべりついたサバイバルナイフ。
もう片手の手を私の両親の血で染めて・・・
亜煌君が立っていた。
「やっと起きたぁ♪♪燐ちゃん起きないかと思っちゃったよww」
『え・・・・・・』
「ほら、燐ちゃんこの前親が親馬鹿で困ってるって言ってたじゃん?」
私は前に亜煌君と遊んだ時に両親との会話を話していた。
親が親馬鹿だということ。
亜煌君が好きだということ。
結婚したいということ。
「僕も燐ちゃんの事だぁいすきだからさ!燐ちゃんを困らせるような人はちゃんと処分しないとね♪♪」
その時は何を言っているのか解らなかった。
「燐ちゃんのパパもママもいなくなったから、これからは僕と暮らそうね♥」
今にして思うと、彼の愛はとても歪んだものだった。
彼の家庭事情は特殊過ぎたのだ。
親に虐待され、愛情を知らなかった。
それがあの悲しい“事故”を起こした。
今ではそう思えるようになっていた。