第5章 4月。
「お母さん帰ってきたらどうするつもりだったの?」
冷たいフローリングに裸のまま寝転んで、隣のお兄ちゃんに目を向ける。
お兄ちゃんは「ははっ」と笑って続けた。
「来る途中で会ったんだ。俺が来てるならデパートで肉買ってくるとか言ってたから、まだまだ帰って来ねーよ」
「それなら教えてくれればよかったのに」
無駄にハラハラしちゃったよ。
いくら覚悟を決めたって言っても、お母さんにはやっぱり言えないよね……。
「そんな顔すんな。お前は俺を信じてればいいんだよ」
お兄ちゃんには何だってお見通し。
「うん」
私は頷いた。
「唯、好きだ」
ずっと聞きたかった初めての言葉と共に唇が重なる。
いつかはもしかしたら兄妹に戻らなくちゃいけない日がくるのかもしれない。
でも、今はこのまま……。
私はこの人に、ついていく。