第2章 審神者見習い
この2週間で、柚子は男の本丸に大分馴染んでいた。
それは彼女がいい子であるからというのもあるだろうし、この本丸が彼女のことを歓迎しているからというのも大きいだろう。
柚子に審神者業について教えるのは主に男であるが、刀剣男士たちも積極的に関わろうとしていたし、柚子の方も飲み込みが早く、また分からないことは素直に聞くというのは彼らに好印象を残した。
そんな中、男が城下町へ繰り出そうと言った。
何か不足している物でもあっただろうか、と堀川国広は頭の中で考える。
そんな堀川国広に気づいて、男は首を振った。
「せっかくだし、柚子ちゃんに着物か袴か、浴衣を買おっかなと思って」
あ、もちろん柚子ちゃんが迷惑じゃなければだけど。
男が付け足してそう言うと、柚子は首をぶんぶんと横に振った。
「そんな、高いのにわるいです…」
遠慮と嬉しさが葛藤している様な――多分実際そうなのだろう――顔をしながら、柚子は言う。
それに反対したのは乱藤四郎だった。
「えー!買おうよ〜!絶対似合うのに!それに、主さんのことなら気にしなくていいよ。主さんが買ってあげたいだけだと思うから」
「でも……」
「遠慮なんてしなくていーって。ついでに俺も城下町行きたいし」
な?と言って柚子を誘うのは加州清光である。
男はふた降りの言葉に苦笑いを零しつつ、柚子に言葉をかけた。
「記念、って言ったらあれだけど、きっとこれからも着物とかは役に立つと思うしさ」
「…本当に、いいんですか?」
「もちろん」
男がにっこりと笑って頷けば、柚子はかんばせを輝かせた。
それを肯定と受け取った男は、さっそく準備に取り掛かる。
加州清光と乱藤四郎は行く気満々だし連れて行くとして、他に誰を連れて行こうか。
行きたいのは皆行きたいだろうが、全員連れて行くのは厳しい。
さて誰を連れて行くかな。
男は城下町へ連れて行く面子を思い浮かべながら、ふと視界の端に入った紙とペンを見てこれだ!と思いついた。