第12章 硝煙
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男の帰還に喜ぶ空気でもなかった。
刀剣男士たちはどうも後味の悪い思いで、横たわる死体を見つめる。
柚子の死体の側に立つ男と鶴丸国永の間に、会話はなかった。誰もなにも、言い出せなかった。
「審神者さま」
再び、こんのすけが現れた。
男は顔を上げ、頷く。どうやら政府のものが到着したらしい。
ゲートを開ければ、スーツを身にまとった数人の役人と、蜂須賀虎徹、その主である白城がいた。
「白城さん…?」
「おう、久しぶり…って程でもないか。まさかお前の本丸だとはなぁ。まぁ、詳しくは後で話す」
それだけ言うと、いつものような豪快さは鳴りを潜め、その横顔は真剣そのものだ。
ああ、仕事か。
男は察する。
白城が政府の手だけでは負えない案件を手伝っているのは知っていた。よく政府に駆り出されるのだと、本人から聞いていたからだ。
白城は男の足元に横たわる少女の遺体を認めて、眉間にしわを寄せる。
しゃがんで手を合わせ、静かに黙祷。
蜂須賀虎徹は、黙って様子を見守っていた。