第9章 柚の花は白く
私の目の前から、次々と消されていく同胞たち。同じ目的を持っていたものたち。
殺されては消え、殺されては消え。
数はこちらが明らかに優っていたのに、気づけば戦況は覆っていた。
何故かなんて分かっている。
私が彼を殺さぬように、命じているから。
そして彼が生きている限り、彼の刀剣男士たちは消えることなく、傷を負っても応急処置ではあるが幾らか回復される。
そしてなにより、迷いのある私と、迷いのない彼ら。
それが私と彼らの大きな差だった。
なんて皮肉なんだろう、と思う。
好きになんてならなければよかった。
好きになんてなりたくなかった。
優しさや温もりなんて知りたくなかった。
私は私の中の世界だけでよかった。
そう思うのに、何度だって思うのに。
好きになってよかったと思うことも、あなたから貰ったたくさんのものも、すべて、幸せだったとたしかに認めることができるのだから、それこそがきっと、一番の皮肉で私の不幸だ。