第9章 柚の花は白く
私の家族は、両親と少し年の離れた妹の四人だった。
物心ついた頃から、私は自分の置かれている状況というのを、両親から耳にタコができる程聞いていた。
大凡小さな子どもに聞かせるべきではないであろう、絶望的でいて受入れがたい現実を、それでも両親は毎日のように言って聞かせた。
私の背に乗っかったのは、底がない絶望と十も行かない子供が背負うにはあまりに過酷な重圧。
それでもどうにか成し遂げようと立ち上がったのは、他ならぬ自分と家族のためだった。
私を生み育ててくれた両親は、妹を生んで間も無く自殺した。私が十、妹が二つの時だった。
時の政府に捕まった両親は、国の手にかかるくらいならばと、自殺を選んだらしい。すべて、知人の推測だ。
残された私と妹は、生まれた時からずっといた反乱軍の元で暮らした。
反乱軍の者というと、正しき歴史を覆す悪しき者と思われがちだが、実際は違う。
反乱軍の多くは、聡明で、本当の絶望を知っているものが多い。
彼彼女らが悪だと言うのならば、私は悪だと断罪する人間こそが悪なのだと、そう言ってやりたい。