第1章 契り
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宵闇が濃く、ふかく。
浮かぶ月はでっぷりと太っていて、柔らかな黄色に光っている。
部屋を照らすのは淡い蝋燭の灯火のみで、それがより一層雰囲気を作っていた。
男は布団に押し倒され、どっどっと鳴る心臓の音を聞きながら睫毛を震わせる。
羞恥のせいで真っ赤に染まっているであろうかんばせは、己で自覚できるほど熱い。
目に映るものが僅かに揺れ、輝いて見えるのは、その瞳に浮かぶ泪のせいだろうか。
目の前には男が好きで好きでたまらない彼の刀ーー鶴丸国永が、男に覆いかぶさる形で見下ろしていた。
「緊張してるのか?」
不意に、鶴丸国永が男の頬を撫ぜるように触れ、問うてきた。
男は緊張で裏返りそうになる声で反論する。
「当たり前だろっ」
顔を逸らしたままそう言えば、鶴丸国永の視界に映るのは艶かしい首筋だ。
鶴丸国永は小さく舌舐めずりをして、そこに顔を埋めたくなる衝動をぐっと耐え、代わりにとでもいうようにつうっと指で首筋をなぞった。
そうすれば、ひくっと男が反応する。