第6章 閑話休題:大倶利伽羅
「そう、ですな。…きっと。主は、そういうお方だ」
静かな声は、自身を納得させるように染みていくような声だった。
少しの沈黙を挟んで、顔を上げた一期一振の表情はいくらかマシなものになっていた。
「大倶利伽羅殿、ありがとうございます。話を聞いてもらって、大分楽になりました」
「…あんたに元気がないと、国永の相手に困るからな」
「ははっ、それは成る程。お互い彼の悪戯にはお手上げ、というわけですな」
これで一期一振は大丈夫だろう。
大倶利伽羅は、ひっそりと胸を撫で下ろしてこの本丸に顕現したばかりの自分を思い出していた。
馴れ合うつもりはない。
そう言っていたのが嘘のようだ。
らしくないことをしていると思う。
自らこうして他の刀の面倒を見るなんて、あの頃からは想像もできない。
これも全て、主が主であるからだろう。
きっと、他の審神者ではこうはならなかった。
そのことが誇らしいとは、誰にも言わないでおこうとひっそり笑った。