第5章 瑟瑟と
ぼたぼたと、いとしさが溢れる。
言うつもりのなかった言葉が、口をついて出た。
不安が、悲哀が、この手を離れようとしている温もりが、喪うかもしれないという恐怖が、鶴丸国永を支配する。
名前は呼べない。
それでも、僅かな可能性を願って口にした。
どうしたって、きみは行ってしまうんだろう。
その接吻が証拠だ。
行くな、行くな、いくな!
こころは悲鳴をあげている。
ずっと俺のそばにいてくれ。きみのいない世界なんてごめんだ。息の仕方さえ、危ういんだ。
心臓を掴まれてるみたいに。血液は凍ってしまったように。ぜんぶぐしゃぐしゃになって、ただ切に願う。
頼むから、いかないでくれ。