第5章 瑟瑟と
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いつだって、負担が大きいのは受け入れる方だ。
明日のことを考えればやめた方がいいのかもしれない。
それでも、男は鶴丸国永とまぐわうことを望んだ。
布団の上に四つん這いになって、その上から鶴丸国永が覆いかぶさる。
直接触れる肌と肌は、汗でしっとりと濡れていた。
熱くて、火傷しそうだ。
「あるじ」
ふいに、鶴丸国永が男を呼ぶ。
そのわずかな振動さえ結合部から伝わってきて、男はふるりと身を震わせた。
「ん?」
その快感を呑み込んで先を促すように聞けば、しかし鶴丸国永は黙り込んでしまった。
およそ情事には似合わない雰囲気だ。
男は不安になって、でも、それ以上に鶴丸国永の不安を感じて、自ら身体を器用に動かし鶴丸国永のものを抜いた。
彼に与えられる快感を知っている身体は疼くけれど、それを理性でねじ伏せて仰向けになる。
下から見上げる鶴丸国永の顔は、影でちゃんと見えない。
「つる、」
どうした、と問おうとして、その言葉は遮られた。つよく抱きしめられたからだ。
あまりの強さに、男は口を噤む。
欲を感じさせないようなやさしいキスが降ってきて、ようやく伺えた表情は、泣く寸前のこどものようだった。
きれいなかんばせが、くしゃりと歪んでいる。
今まで見てきた中で、いちばん幼い表情だった。
心臓を掴まれて息ができない。切なさが男を襲う。