第1章 〜人形のような少女〜
「ねぇねぇ、ちゃんどっち勝つと思う?」
フェンス越しに見ていると、菊丸先輩が横に並ぶ。
今目の前の試合は、千里千歳と白石蔵之介。
じっと彼らを見つめて、相手の心理状態、コンディション、身体状態を読み取る。
「千歳先輩、ですね」
「え、断言?!」
「メンタル面で千歳先輩の方が少し勝ってますから」
「えぇ?!ちゃん、心理状態読めちゃうの?!」
「え?読めないものなんですか?」
「…あ〜…君がどんなスポーツでも一番取っちゃう理由分かっちゃったかも…」
「どんなスポーツでも、相手の心理状態、コンディション、身体状態を読み取れてしまうなら、これほど有利な事は無いからね。ちゃん、君、昨日の試合では使わなかったね?」
いつの間にか現れた不二先輩の蒼の瞳に真っ直ぐ見つめられて、目を反らす。
だって、これを使ってしまうと試合が面白くないんだもの。
「…気に障りましたか?」
「まさか。でも。…次は嫌でも本気にさせてあげるよ」
すっと真っ直ぐ見据えられて、秀麗な顔立ちから、目が離せなくなる。
「はい、楽しみにしてます」
お返しにと微笑むと、デジャウ。
周りの音が止んだ。
「ゲームアンドマッチ!ウォンバイ千歳!」
一拍置いて容赦無い宣告と。
「やってもた!」
ボールを落とした白石先輩の絶望の叫びが木霊した。