第2章 【黄瀬】「今年こそは」なんて聞き飽きた
「今年こそは!」
そう意気込んで、おみくじを引くのは、私の幼なじみの黄瀬涼太。
小さい頃から毎年一緒に初詣に来ていて、中学校に上がって以前より少し距離が空いてしまった今でも、その習慣をやめないくらいには仲が良い。
でも涼太は最近、モデルオーディションに合格したって言うし、来年はもう、一緒に来れないかも知れないな。
そう思うと悲しくて、ため息が出た。
「ほらヒサメっちも早く引くっスよ!」
『あ、うん!』
急かされて、慌ててくじを引いた。
『そう言えば涼太、ここ何年かずっと、「今年こそは!」って言ってるけど、何かあるの?』
おみくじを結ぶところに移動するまでの間に、私は気になっていたことを聞いた。
だって、もう聞き飽きたんだもん。いい加減本当のことを知りたくもなる。
「あー、なんてゆーか…願掛け、してるんスよ」
『願掛け?』
「そう。願掛け」
確かに、涼太おまじないとか好きそうだし、あり得るかも。
でも、そんなに何年もかけるほど?
そんな私の疑問を感じとったのか、涼太は付け足した。
「どうしてもやりたいことがあって、でも絶対失敗したくないから、大吉が出たらって決めてるんス。
でも、決めてから1回も出たことなくて…。
だからいつもつい「今年こそは!」って言っちゃうんスよね…」
『そうだったんだ…』
涼太にとっておみくじが、そんなに大きい意味を持ってたなんて知らなかった。
『出るといいね、大吉』
そう言うと、涼太は「はいっス!!」と言って、満面の笑みを浮かべた。