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赤と黒のそのあと【HQ】【短編】【裏】

第21章 卒業を見送る 後輩赤葦



例年より早い開花予想だと、 すいれんさんは嬉しそうにしてた。
そうだね、としか言えなかった。

あと少ししたら、 すいれんさんは ここを去るから、それを祝うような開花予想が、煩わしかった。



けいじ、と唇のかたちが動く。どれだけ離れてても 分かる、その圧倒的な存在感。

見るものの目をひく雰囲気。
容姿や、髪色や服装ではなく、オーラ。

すいれんさんだ。

「 すいれんさん、帰りですか?」
『うん、そうだよ 一緒に帰る?』
「お願いします」

すいれんさんのとなりが嬉しくて、つい遠回りしてた。

他愛もない話をしてると、 すいれんさんが桜を見つけた。
すいれんさんは、もうすぐ国公立の大学へ進学をする。
俺をおいて、進学をする。

付き合ってるわけでもないし、そんな素振りを見せたつもりはない。けど、気持ちは落ち込んでいく。

大学という広い世界のなかに、 すいれんさんは行く。
そこで、何を見て、感じて、考えるんだろう。

恋に落ちるんだろうか。

『京治、?』
「!あぁ なんですか」
『木兎くんが居ないと、やっぱり寂しいの?』
「いえ、そんなことは…」

なくないな、寂しいな。
(木兎さんには口が裂けても言えないけれど)
でも違うよ、 すいれんさん。
寂しい気持ちの大部分は、あなたも行ってしまうからですよ。

『木兎をおっかけるのも 京治はもったいないよ、もっと賢い大学行けるし』

はは、すいれんさんは冗談めかして笑った。

すいれんさんの後ろにつぼみが見えた。

「 すいれんさん、」

「俺、 すいれんさんと同じ大学行きたいです」

そう言ったら あなたは きょとんとしたあと、俺の名前を呼んで、頷いてくれた。


『待ってるね、京治』
「はい」

今は、先輩として「待ってる」かもしれないけれど、
来年、覚悟しててくださいね。

絶対、落としてみせますから。

ばいばいと手を振る すいれんさんに軽く手を振りながら、そう誓った。


song by さよならメモリーズ /supercell


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