第21章 卒業を見送る 後輩赤葦
例年より早い開花予想だと、 すいれんさんは嬉しそうにしてた。
そうだね、としか言えなかった。
あと少ししたら、 すいれんさんは ここを去るから、それを祝うような開花予想が、煩わしかった。
▽
けいじ、と唇のかたちが動く。どれだけ離れてても 分かる、その圧倒的な存在感。
見るものの目をひく雰囲気。
容姿や、髪色や服装ではなく、オーラ。
すいれんさんだ。
「 すいれんさん、帰りですか?」
『うん、そうだよ 一緒に帰る?』
「お願いします」
すいれんさんのとなりが嬉しくて、つい遠回りしてた。
他愛もない話をしてると、 すいれんさんが桜を見つけた。
すいれんさんは、もうすぐ国公立の大学へ進学をする。
俺をおいて、進学をする。
付き合ってるわけでもないし、そんな素振りを見せたつもりはない。けど、気持ちは落ち込んでいく。
大学という広い世界のなかに、 すいれんさんは行く。
そこで、何を見て、感じて、考えるんだろう。
恋に落ちるんだろうか。
『京治、?』
「!あぁ なんですか」
『木兎くんが居ないと、やっぱり寂しいの?』
「いえ、そんなことは…」
なくないな、寂しいな。
(木兎さんには口が裂けても言えないけれど)
でも違うよ、 すいれんさん。
寂しい気持ちの大部分は、あなたも行ってしまうからですよ。
『木兎をおっかけるのも 京治はもったいないよ、もっと賢い大学行けるし』
はは、すいれんさんは冗談めかして笑った。
すいれんさんの後ろにつぼみが見えた。
「 すいれんさん、」
「俺、 すいれんさんと同じ大学行きたいです」
そう言ったら あなたは きょとんとしたあと、俺の名前を呼んで、頷いてくれた。
『待ってるね、京治』
「はい」
今は、先輩として「待ってる」かもしれないけれど、
来年、覚悟しててくださいね。
絶対、落としてみせますから。
ばいばいと手を振る すいれんさんに軽く手を振りながら、そう誓った。
song by さよならメモリーズ /supercell