第15章 赤葦と距離感
彼女を、ずっと見てきた。
『京治、』
「なに?」
彼女は、長いこと 俺の知らないひとと付き合っていた。
そして、別れを告げられた。
一方的に。話し合うこともなく、バッサリと。
『あのさ、傷つけたり、傷つけられて、培っていく関係もあるとおもうのよね』
「うん」
『でも、たった一回傷つけられただけでさ、パリンッ て 氷みたいに、ヒビが入って、割れちゃったんだよね』
「うん」
『もし、子どもだったら、ごめんなさいして、明日からまたよろしくねになるんだろうけど』
「うん」
『それができなかった』
「うん」
『それって、長年かけてつくりあげた関係にしては、うすっぺらいよね』
「……」
『京治はどうおもう?』
俺は、 すいれんにこんな顔をさせるヤツなんてキライだ。