第11章 私の独白
私は鬼だ。
自覚は無かったけれど子供の頃から両親にそう諭されながら生きてきた。
それでも成長するにつれ、この身に受けた傷が直後に治癒する等、明らかに普通の人間には起こり得ない現象を経験すれば自覚せざるを得ない。
只、自覚したからといって特に不自由な暮らしではなかった。
人間達の社会からは一線を画し、人里離れた山奥で私の父が統べるその集落は全ての住人が鬼だった。
両親から沢山の愛情を注がれ、心を許し合える友も居た。
このまま何事も無く安穏に暮らして行ける……そう思っていた。
………あの時までは。
ある晩、私の居る集落が人間に襲われた。
突然の急襲に鬼達は反撃する術も無く、無惨に倒れていく。
集落中に火を放たれ、私達がそう簡単に命を落とさない事を知っているのか、人間は容赦なく鬼達の首を落とし心の臓を貫いた。
まるで地獄絵図のようだった。
両親が私だけはと必死に逃げ道を作ってくれて、命辛々脱け出した私は集落を見下ろす山の中腹でその地獄絵図を茫然と眺めているしか出来なかった。
只一人生き残った私は数人の人間の男達に拾われた。
私の事情を理解しているらしい男達は表向きは優しく、だが私が鬼としての力を発揮しないよう宥め賺しているようにも見える。
それでもまだ幼かった私は一人で生きていく術など持たず、その男達に着いて行くしか選択肢は無かった。