第10章 僕達の乱舞
風間の発した「同胞」という言葉は僕には何の事かさっぱり理解出来なかったけれど、そう問われた彼女は明らかに動揺していた。
その様子に風間が満足そうに笑う。
「意外な所で良い拾い物をしたようだな。」
それでも彼女は僕を庇うような体勢を一切崩さなかった。
「総司っ……大丈夫かっ?」
じりじりとした対峙の最中、平助の声が聞こえて此方に駆けて来るのが分かった。
その気配に風間が傲岸不遜に眉をひそめる。
「全く……とことん面倒な奴等だな。
肝心な場面を邪魔させる訳にはいかぬ。
天霧…片付けて来い。」
「分かりました。」
天霧と呼ばれた男は礼儀正しく僕達に軽く一礼すると、平助の方へ向かって行った。
「さて……話を続けようではないか。」
そこかしこで激しい戦闘の音や叫び声が響く中、風間はそんな事は何でも無いかのように彼女に視線を戻す。
警戒心も顕に風間を見据える彼女の顎に風間の手が掛かり、まるで品定めするような手付きで何度も彼女の顔の角度を変えた。
「ふん……悪くない。
いや、気に入ったぞ。」
風間に触れられても特に拒みもしない彼女を見て僕は駄目だと思った。
彼女に触れては駄目だ。
この娘は他人に触れられる事に焦がれている。
だから、もう僕以外の男がこの娘に触れたら駄目なんだ。
言う事を聞いてくれない自分の身体を気力で何とか奮い立たせ、風間の手から彼女を引き離そうとした僕の耳に信じられない言葉が入って来た。
「女鬼は貴重だ。
俺と共に来い。」