第8章 藤堂平助の渾沌
俺は夢を見ているんじゃないかと思った。
それも酷い悪夢だ。
今、俺の視線の先では女が総司と一君の二人掛りで凌辱されている。
何だ………これ?
一体何が起こっているんだろう?
夕餉の時刻になっても一向に姿を見せない二人が気になって俺は探しに出た。
屯所中を見て回っても二人の姿は無い。
そうなると考えられるのはあの土蔵だ。
俺は関わりたくないと言ったあの夜から女の事は何も聞かされていないし、聞こうともしなかった。
だから土蔵に足を踏み入れるのには僅かに躊躇したけど、総司と一君を探すだけだ…と自分を奮い立たせてやって来た。
そしてその中で繰り広げられていた光景に息を飲む。
このまま何も見なかった振りをして此処を出れば良い。
此処を出て、その後も知らぬ存ぜぬで居れば良いのに……
何故か俺の足はゆっくりと、でも確かに、淫らに交わり続ける三人の方へ向かってしまった。
近付く俺の気配に総司が気付いて名前を呼ぶ。
「平助……?」
その声に一君も俺の顔を見た。
それでも二人は女を責める手を全く緩めなかった。
「………何してるんだよ?」
情けない程震える声で問う俺を、総司は頬を上気させてくすくすと笑う。
「何って……見れば分かるでしょ?
僕と一君は仕事をしてるんだよ。
この娘ね………まだ何も喋らないんだ。」
言いながら総司は女の後頭に手を伸ばし、一層強く自分の股間に顔を押し付けた。
「んっぐ……ぅ………」
嘔吐くような声を上げた女の顔を見下ろして
「まあ、今は喋れって言っても喋れないけどね。」
総司は酷く愉しそうに笑う。
自分自身をしゃぶらせて悦に笑う総司も、女に背後から覆い被さるようにして夢中で腰を打ち付けている一君も……
こんな二人を……俺は知らない。