第6章 斎藤一の悋気
俺から受ける責め苦に女の両足がばたつき激しく身を捩るが、女の上に股がる俺の重さがそこから逃れる事を許さない。
身を捩った拍子に女の浴衣が乱れ、また胸元が露になった。
そこに無数に散らされている紅い痣に気付いた俺は、ゆっくりと女の首から手を離した。
突然に呼吸を再開させた女はげほげほっ…と咳き込みながら、その紅い痣を強調するかのように胸元を大きく上下させる。
「………誰だ?」
刹那、俺の中で何かが弾けた。
「この痣は誰に着けられた?
副長……では無いな。
この間はこんな物無かった筈だ。
では総司か?左之か!?
どっちだ?……答えろ。」
唐突に激昂した俺の姿に女は僅かな動揺を見せた。
縛られた両腕で胸元を隠し、俺の視線から顔を背ける。
「………っ……邪魔だっ!」
俺は乱暴にその拘束を解くと、女の両手首を掴み渾身の力を込めて床に縫い付けた。
何故俺がこれ程に苛立っているのか、女は全く分からない様子だ。
それはそうだろう。
俺にだって分からないのだから。
只々嫉妬にも似た酷く醜い感情に支配されて、自分が抑えられない。
「言え。」
目を反らし続ける女の態度が益々俺を苛立たせる。
「俺を見ろ。」
有無を言わせぬような低く響く声で言った俺の視線と女の視線が漸く絡み合う。
「あんたは『俺じゃない』と言ったな?」
女の喉がこくりと動いた。
「では誰なんだ?
俺じゃなければ誰だ?
……あんたは誰を求めている?」
一体何を問うているのだ…と自分でも思った。
この女から聞かねばならないのはそんな事では無い。
そんな事では無い筈なのに…………。
「多分………それは僕だよ。」