第15章 感情で動く、愚かな医者
「終わった…」
ふぅ…と、ゆっくり息を吐き出した。
際どい。
これだけ深く損傷していたのにも関わらず、出血量が比較的少なかったのが幸いだ。
土壇場での応急処置が功を奏したのだろう。
ピーーーーッ。
という嫌な音がこだました。
心停止。
「ダメですよ!平野さん。
起きてください!
死んじゃ…死んじゃダメですっ」
必死に心臓マッサージをしている。
30回を3セット繰り返すが変化は見られない。
「もう諦めて」
「まだです、まだ…」
「ムダだって言ってるでしょ」
力づくで心マを止めさせようとするが…。
「まだ助かります!」
「ッ…」
簡単に振り払われてしまった。
男と女の力の差。
「水原ちゃん。
神那ちゃんが止めなさいって言ってるよ」
神崎が水原の身体を患者から離した。
「17時33分、死亡確認。
神那ちゃんカルテお願いね」
モニターの音を止め、頼んだ。
「…分かった」