第13章 1歩前進
「1回しか言わないからよく聞いて。
あの場でどちらを選んでも間違い、けどどちらを選んでも正しい。
医者の間違いっていうのは “ 自分の判断に自信が持てない ” 時。
医者が謝るべき時は “ 患者の為にならないことをした時 ” のみ。
水原が現状に満足するのも、しないのも自由。
だけど決して迷わないで。
立ち止まらないで。
立ち止まったらそこから動くのは厳しいし、振り落とされるだけだから」
シレッと名前を呼んだ。
「はい」
凛とした目が神那を見つめた。
「あ、それより名前…」
「気のせいじゃない?」
「えぇー…そんなぁ」
情けない顔。
「神那先生、俺もう弱音吐きません。
分からないなんて言いません。
けど俺は何も出来ないです。
これからはもっと死ぬ気で勉強します。
だから…俺に医者のいろはを教えてください。
フライトドクターも、救命医も。
全てものにしてみせますから」
深々と頭を下げた。
「私は教えない」
「そんな…」
「だから…見て覚えて。
目で見て私の技術を盗めば良い」
「っはい!」
流された、な。