第13章 1歩前進
あれからしばらく、処置も無事に終わり一息つける状態になった。
机に身体を伏せ、まだ小刻みに震えているフェロー。
「あれが現場。
君がどれだけ甘い考えをしてたか分かった?」
「…はい。
凄く暑かったです。
身体が熱くて熱くて、でもそれもすぐに冷たくなって…。
怖かったです…」
私もこんな素直に弱音が吐けたらどんなに楽になるだろうか。
「確かにあそこは暑い。
戦場だよ、あそこは。
けどだからといって逃げる訳にはいかないの。
患者を前にして取り乱してはいけない。
君は最低だよ。
自分を守ろうとして患者から逃げた、目を背けた。
何もしようとはしなかった」
「何も言い返せません…」
「1つだけ言う。
今後この仕事を続けるのなら、今日のような場面が幾度となく訪れる。
失敗は許されない。
たった1度のミスが医者を傷つけ、潰すから。
その覚悟はある?
どんな逆境の中でも挫けず立ち向かって行く、執念にも似たそんな覚悟が」