第11章 【寒くて幸せ日和】月島蛍
ピリッと肌を刺す空気、はーっと吐く息がうっすらと白く染まり出す季節。
昼はまだ少し暖かい日もあるけれど、朝晩は涼しさを通り越し、すっかり寒くなった。
本当、嫌になるよね・・・
人混みの中、頭一つ飛び出た背中を丸めて、ポケットに両手を突っ込みため息を落とす。
寒いのは苦手だ。
暑いのも得意じゃない。
暑苦しいのはもっと嫌いけど。
うおおぉぉー、そう雄叫びとともに肩をぶつけながら、我先にと体育館へ走る日向と王様を眺める。
ほら、暑苦しい・・・
また一つ大きなため息と同時に胸に浮かんだ嫌な予感。
その瞬間、ツッキー!、そう後ろから勢いよく飛び込んでくる元気な声。
「おっはよー!今日は寒いね~♪」
腕を絡めてギュッとしがみついてくる。
毎朝、毎朝、必ずこの時間に現れて、こうやってオレに絡んでくる。
全く、小宮山もよく飽きないよね。
ほーんと、暑苦しい・・・
「その呼び方、やめてもらえますー?」
ついでに暑苦しいからその腕も離してくれる?
作り笑顔の奥にそんな思いを込める。
「寒い、寒いっ!なんでこんなに寒いのー?、私、寒いの嫌い!」
「11月なんだから当たり前でしょ。」
「あ、でもツッキー、背、高いから風除けにちょうどいいね♪」
「勝手に人のこと利用しないでくれる?」
はぁ・・・、あからさまに嫌みなため息をつくと、あとは無視してズンズン進み続ける。
違いすぎる身長、あわない歩幅・・・
小宮山は、絡めた腕に力を込めて、必死に置いて行かれないように足を動かしている。
それでもいつまでも、僕のペースについてこれるはずもなく、息を切らし、足ももつれて限界が近いのは一目瞭然。