第10章 【夜空に開く大輪の花日和】手塚国光
「どうした?俺の顔に何か付いてるか?」
私の視線に気がついたあなたは、その眼差しを空から私へと向ける。
ううん、何でもないの、そう首を横に振って空に視線を戻すと、そうか、そう呟いてあなたも空を仰ぐ。
私に向けられたそのメガネの奥の切れ長の目は、普段の眉間のしわなんて全く感じられない優しさに溢れるもので・・・
繋がれた手の暖かさに胸がいっぱいになる。
あまり豊かじゃないあなたの言葉も表情も、この繋がれた指先から全てが流れ込んでくる。
ああ、手塚くん、同じだね・・・
私達、今、同じものを見て、同じことを考えて、同じ時を過ごしているね・・・
しっかりと握りしめて空を見上げる。
2人で見上げた大輪の花の美しさとこの瞬間を、目と心に焼き付ける。
いつまでも、決して色褪せてまわないように・・・
【夜空に開く大輪の花日和】手塚国光