第10章 【夜空に開く大輪の花日和】手塚国光
ヒューーーーーッ
長い音と共に空へ上る一筋の白煙と、パッと夜空に開く大輪の花。
少し遅れて響いた音がドンと胸を振るわせる。
「たーまやー!!」
部活帰り、青春台を一望できる高台の公園。
コンテナの上に立ち上がる英二の掛け声。
それから沸き起こるみんなの歓声。
盛り上がるみんなから少し距離をとり、一番後ろに佇むあなた。
そっとその隣に並んで一緒に空を眺める。
「キレイ・・・」
「・・・ああ、そうだな。」
ほう・・・っと溢れた溜め息。
思わず呟いた独り言に、あなたはちゃんと答えてくれる。
いつもと変わらないその一言は、とても短く、とても低く、とても心地よい・・・
一瞬だけ触れ合った手。
花火の音とは別の理由で震え出す心臓。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
いいかな・・・?
迷惑じゃないかな・・・?
少し戸惑ってから、そっとその左手を握る。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
震え続ける心臓、熱く火照る頬、汗ばむ手の平・・・
全身の神経がつながれた手の指先に集中する。
チラリと感じたあなたの視線にギュッと瞳を閉じた。
「良いものだな・・・」
ぽつりと呟いたあなたの声・・・
とても優しい・・・そして暖かい・・・
恐る恐る顔を上げてあなたの顔を伺いみる。
「手塚くん・・・?」
しっかりと握り返された手の平。
あなたの頬がほんのり赤いのは、夜空の大輪に照らされているから・・・?
それとも・・・私と同じ理由・・・?
同じだったらいいな・・・
そうだったら嬉しいな・・・