第4章 【ウイルス日和】黄瀬涼太
頭も痛くて、クラクラして、ボーッとする・・・
それから凄く寒くて身体の震えが止まらない・・・
フラフラになりながら何とか自宅マンションにたどり着くと、言うことを聞かない身体を引きずるようにベッドへと倒れ込む。
何とか仰向けになって、はぁ・・・と大きくため息をつく。
仕事中から調子悪いなって思ってたけど、気のせいだって自分に言い聞かせた。
退社するころには気のせいなんて言ってられないほど具合が悪くなっていて、なんとか気力を振り絞って電車に乗った。
自宅につくと張りつめていた糸がプツンと切れて、一度ベッドに横になってしまった今はもう、寝返りを打つ力も残ってない。
ああ、パジャマに着替えなきゃ・・・メイクもそのままだし・・・
頭ではそう思っても、やっぱりもう動けそうにもなくて、ムリかぁ・・・そうもう一度ため息を落とす。
仕方がない、少し寝たらちょっとは体力回復するでしょ・・・そう思って遠退く意識に抵抗するのをやめる。
・・・ダメ、涼太に連絡入れなきゃ・・・
涼太は私の年下の彼氏で、大学でバスケに励む傍ら、モデルなんてやっている。
私も仕事があるからお互い忙しくて、なかなか思うようにデートも出来ない。
だけど今夜は久々に会おうってことになっていて、彼の撮影が終わったら家に来てくれることになっていた。
こんなんじゃ、涼太にうつしちゃう・・・
風邪か、インフルエンザか分からないけれど、どちらにしても涼太に会うわけにはいかないもの・・・
強豪大学のバスケ部のエースで全日本の代表にも選ばれている彼、モデルもバイト感覚とは言え大切な仕事、その両方に迷惑をかけることになる。
涼太の足を引っ張ることだけはしたくない・・・
『ごめんなさい、今夜、残業で会えなくなりました。』
最後の気力を振り絞り、動かない身体でバッグから携帯を取り出すと、涼太に心配をかけないように嘘のメールを打って、それから意識を手放した。