第4章 〜華奢〜
「でも、庭も大事でしょう?」
「…そうだが…」
完璧に元の風体を取り戻した庭と、不思議そうに身体を起こす隊士達を見て、彼は小さく溜息を吐く。
「今回だけ、見逃してあげても良いじゃない?で、十一番隊の隊長さん。何しに来たの?」
「ああ?てめぇを斬りに来たに決まってんだろうが」
刀を肩に掛けた彼は、さも当然のことの様に答える。
「もしかして昨日の事根に持ってるの?」
「そんなんじゃねぇよ。お前は強そうだからな。斬ってみてぇだけだ」
当たり前だろとでも言いたげに此方を見るが、その台詞はどう捉えても唯の戦闘狂だ。
「…ねぇ、これであの隊回ってるの?」
こそっと隣に問い掛けると。
「回ると思うか」
忌々しそうに眉間の皺を刻む白哉を見ると、どうやら他の隊にまで被害があるらしい。
なら、少し考えが無いわけでもないのだけれど。
「ん、じゃあちょっと総隊長の所に行ってくるね」
こそっと白哉に耳打ちすると
「…そうか。怪我はするな」
同じく小さな声で心配してくれた。
「大丈夫!」
「ああ?てめぇ逃げんのか?」
此方の動向に気付いた更木が、不機嫌な声を発するが、
「此処じゃ迷惑でしょ?追ってこれたら考えてあげる」
くすりと笑ってそう切り返し、瞬歩で一番隊に向かって駆けた。
そういえば、白哉の紗、借りっぱなしだけど大丈夫かな。
風にはためく綺麗な布に、今更ながらそんな心配を抱きながら。