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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第23章 閑章:泡沫


――欲しくてたまらなかったもの。



「大嫌いにさせて。もう無理なの、貴方のことを一方的に思うのは、無理なの。」





無言が怖かった。従来狡噛慎也と言う男は確かに口数の多い方では無いが、それでもこんなに無言でいる事もない。
少なくとも未だかつて付き合って来た6年の間でこんなに無言が怖いと思った事は無かった。

「――慎也?」

目の前でムスッとしたままの慎也に泉は恐る恐る話し掛ける。慎也はようやく視線を泉に向けた。

「――聞きたい事が有りすぎて困ってるんだよ。」
「うん?」

シュボッと言うジッポの音を泉は懐かしく思う。それはかつて彼の相棒だった佐々山が使っていたものだった。

「お前と槙島の関係は、とか。あの日なんで俺を助けた、とか。聞きたい事が多すぎる。俺は――、この6年お前の事は何でも分かっているつもりでいたがとんだ間違いだったな。」
「――うん。」
「とりあえず答えろ。お前の心は今誰のものだ?」

グイッと腕を引かれて、慎也の顔が近くなる。

「――慎也のものよ。じゃなかったら戻って来ないわ。」
「槙島は?」
「――あの人は、多分慎也が思ってるような関係じゃないわ。」
「どう言う意味だ?」
「だって慎也、私と彼の間に恋愛感情があると思ってない?」

その質問に、慎也は眉根を寄せる。

「違うってのか?」
「違うわよ。――だって私と槙島聖護は兄妹だから。」
「はぁ?!」

衝撃の事実だとばかりに、慎也が声を荒げれば泉は困ったように笑った。

「義理の――、だけどね。父が引き取ったのよ。1年しか一緒に暮らしてないわ。」
「お前と槙島が兄妹――?!」

想像していなかったのか、はたまた想像したくないのか。慎也は呆然と繰り返す。
その様子に泉は思わず笑った。

「だから。誤解は解けた?」
「ますますこんがらがったよ。じゃあお前は――、3年前の事件の時。佐々山が殺されたあの日、犯人が誰か分かってたのか?」

グッと慎也の腕が泉の首を掴む。
泉は少しだけ苦しそうに呻いた。
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