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騎士の恋

第2章 療養


ナギさんが居なくなるのを確認し。暫くして私の方を見た彼は、私を部屋の中へと促すように背中に手を添えた。

「さぁ、部屋に戻りましょう」

何だかセルナール様が怖い。笑っているけれど笑っていない感じがする。

「ハルラさん、ここに座って」

言われるままにベッドに腰掛けた。すると彼が私のすぐ隣に腰を下ろした。こんなに近い距離で話すことなんて無かったから緊張してしまう。

「ナギとは何を話していたのですか?」

セルナール様が私の顔を覗き込むようにして問いかけてくる。ち、近い!近いです!

「ナギさんは私を心配してくれたみたいで…」

「変な事はされなかったですか?」

「変な事、ですか?」

理解できなくて首を傾げたら、セルナール様が小さく笑った。

「ええ、変な事です。変な場所を触られたり、キスされたり…」

「そんなまさか!ありませんよ!」

セルナール様が言っている意味がわかって、私は慌てて否定した。

「そうですか、それなら良いのですが…」

そう答えても、セルナール様は何だか納得していないように見える。何時もと違う様子に、どうしたのだろう、と心配になる。

「実はね、今日は仕事でうかがったのですよ」

セルナール様は私への差し入れをサイドボードへと置いて向き直った。仕事と聞いて私は姿勢を正す。

「貴女には辛い話しになるかもしれませんが、もっと詳しく話を聞きかなければならない…協力して下さいませんか?」

「…はい」

彼の仕事に私も協力したい。セルナール様のお力になれるなら、私は頑張れる。それに私だってあの事件の犯人を捕まえて欲しいもの。

「あの事件の時の事は覚えていますか?」

「はい」

「寮に戻る時に拐われたとお聞きしましたが…」

「そうです」

「相手は二人。そして何処かへ運ばれて…体を触られたのでしたね?」

「ッ、そ、うです…」

うぅ、何が悲しくて好きな人にこんな話をしなくちゃいけないんだろう。

「どんな風に、触られたのですか?」

「あ、の…一人が後ろから私を拘束、して…もう一人は、前、からで…」

セルナール様の顔が見られない。私は俯いて何とか質問にだけ答えるのに必死だった。

「…今一解りにくいですね。失礼」

ギシリ、とベッドが軋んだと思ったらセルナール様が私を背後から抱き締めていた。
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