第6章 VS
「ただの見合い話だ。少将の妹さんと見合いをしてくれと頼まれてた。」
あれ。もしや、ばれてる?
「扉の前に居る、盗み聞き野郎。とっとと入ってこい。」
がちゃり。と扉を開けて、さっき来ました。を装う。
「いやぁ、びっくりした。なんで俺が今ここに来たってわかったんだ?」
「電話の最初からいただろ。クスクス聞こえてんだ!」
「うっ!」
どんな顔をしているのかと思ったが、案外普通でどちらかと言うと俺の顔が見えて安心したという顔だった。
「なんだよ。そんなに俺に会いたかったか?」
「いいや。説明の手間が省けたと思っただけだよ。なぁ、エド。」
「うん?」
「明日一緒に、北部へ出張に出ているロイ・マスタングの所へ行かないか?」
「おま、何考えてんだ?」
「ロイをからかいに行くんだよ。」
監査副司令を敵に回すとどうなるか思い知らせてやる。って小さく言ったのは聞こえないことにした。
俺は次の日、何も知りません。の顔を練習してから、ビーネと一緒に列車に乗り込んだ。
「でも、ま。たまには二人っきりも良いでしょ?」
「まー、そうだな。」
そうだな。
本当に大佐を殴りに行くのか、はたまた仕事をサボるためなのか。
俺はどちらでもいい。
向かい側の席で、穏やかに笑って窓外を眺めている横顔が、俺だけのモノならどっちでもいい。
「ビーネ。」
「ん?」
「俺も、どんな事があってもお前を離さねぇからな。」
「ありがとう、エドワード。」
・・・