第5章 私が、金髪軍服の男にぶつかった話 2
「う!」
どん!とベタに廊下の曲がり角で誰かにぶつかって無様にしりもちをついてしまった。
くっ。軍人たるものこのような事で膝を付いていてはいけないのに!
「すみません。大丈夫ですか?」
「へ、平気だ!」
す。と顔の前に差し出された手の平。
反射的に掴むと、グイ。と引っ張られ立ちあがった。
「前見てなくて、すみません。」
「いや、こちらこ…そっ!」
か、彼は!
約束の日以降、軍部で目覚ましく活躍している元監査副司令、現アメストリス軍部大総統近衛隊武官長、兼、国家錬金術師総括も担っておられる、ビーネ・ヒューズ大佐!
こここここんなところでお目にかかれるなんて光栄の極み!!
いや、まさに神のお導き!
「あのー。大丈夫です?」
「はっ!平気であります!大総統近衛隊武官長、兼、国家錬金術師総括、ビーネ・ヒューズ大佐!」
「はは。そんなただの役職覚えてんだ、凄いね。」
あぁ。困ったように笑ってご謙遜なさる御姿まさに至極!
私はこのアメストリスを守るために、女でありながら武官を目指して、特訓の日々を過ごしてきた。
そこらの男より十分強い。
そして、この新体制のアメストリス軍部への入軍が叶い、今は日々書類と格闘している。
そして、私の夢は女軍人でありながら、大総統近衛隊武官長、兼、国家錬金術師総括 ビーネ・ヒューズ大佐の様に大総統の警護に付くのだ!
目指せ!大総統近衛!
打倒!鷹の目ホークアイ!
「あの。医務室。行った方がいいですよ?」
「いえっ!必要ありません!」
「いや、必要あるから。行こうよ。デコから血ぃめっちゃ出てるから。」
「平気であります!」
「うん。びしっと敬礼しているのはいいんだけどさ。あーじゃぁ、僕に付き添って。」
「は。それは命令でありますか?」
「そうそう。命令命令。付いてきてー。」
私に、いや。私ごときに背を預けてくださっている。
これは!しっかりと任をやり遂げなければ!
大総統近衛隊武官長、兼、国家錬金術師総括のお背中は私が守りまする!