第1章 貸し借り無し R18
「ねー、エドー。まだー?」
「まだだっつってんだろ!黙ってろ!」
「ねー。」
「うるせぇ!」
「手伝おうかー?」
「いいっ!くんな!」
「サイズが合わないなら、ちゃんと合わないって言えよー。」
「うっるせぇ!誰が豆粒っ!」
シャッ!
「開けんなっ!」
「別に恥ずかしがる事ねぇだろ。」
急に開けられた軍の更衣室のカーテン。
朝っぱらから監査に呼ばれて、何事かと身構えて馳せ参じて見れば、式典の数合わせ。と言われる始末。
僕のでいいかなー?と首を捻るビーネの手には見覚えのあり過ぎる青い軍服。
「大丈夫そうじゃないか。いいなら早く行こう。」
「ちょ、ちょ、ちょっと待てよ。この勲章いいのか?このままで。」
貸してもらった軍服の胸にはビーネがいつも付けている勲章が付いている。
少佐である事の証や監査、監査副司令、その他もろもろ。
「いいのいいの。」
俺の脱ぎ散らかした服は、雑にビーネのロッカーに仕舞われ、奴に手を引かれて軍の廊下を早足で歩いて行く。
俺は自分の軍服は持ってない。
軍服にそでを通したのは初めてだ。
制服。というだけでピンと背筋が伸びるこの感覚はちょっと落ち着かない。
「リザさん。」
「ビーネ君。あら?エドワード君。似合ってるわよ。」
「こんちは。」
会場に飛び込めば、たくさんの人が集まっており式典が始まるぎりぎりの時間だとうかがえた。
僕らはこっちだ。と先を歩いて行くビーネ。
その背中は軍人らしく、びしっとしていて、ちょっとかっこいいと思ったのは秘密。
「背筋伸ばして立っていれば終わるから。」
そういって立たされたのは、ビーネの斜め後ろ。
メインステージの両脇にはお偉そうな人が6人ほどずらりと後ろに部下を控えさせて立っている。
ビーネもそのうちの一人だ。
「おい。なんで俺なんだよ。他にもいるだろうが。」
小声で文句を投げつけると、あっち。と軽く視線をたくさんの軍人が並ぶ方へ投げる。
視線を追って、見て見ればそれほど多くないビーネの部下たちは、揃って会場の穴埋めをしているようだった。
「ここに立つ予定のヴィンズの軍服が、出来上がらなかったんだ。」
「だから、んで俺が。」