第4章 雨に濡れたネコ
平日の午後…雨が降る中、松野家の四男『松野 一松』は傘をさしてビニール袋を手に歩いていた。
袋の中身はネコ缶、友達のネコにエサをやりに行くのだ。
一松「(あー、雨ダルい…。ネコいるかな…?)」
この雨ではネコもいないかもしれない…。
心配しながらも早足に目的地へと向かう。
…ザワ…ザワ
一松「ん?」
暫く歩くと人集りが出来ており、みんな道路を見て何やらヒソヒソと話している。
一松「(なんだ…?)」
気になり人と人の間からチラリと道路に目を向ける。
一松「っ…」
道路の真ん中で血を流し倒れているネコ。
トラックにでも轢かれたのか…胴体は真っ二つに分かれ、腸などが飛び出している。
それでも大きさからしてまだ仔猫だと分かる。
恐らく、まだ生後三ヶ月程……
通行人1「うぇっ、気持ち悪…」
通行人2「可哀想…まだ小さいのに…」
通行人3「汚ねぇな…誰か"アレ"どうにかしろよ」
通行人4「え〜。けど変な菌持ってるかもだしぃ、服汚れるしぃ…」
通行人5「通行の邪魔だ。たくっ、迷惑な…」
みんな仔猫を見てそれぞれ好き勝手な事を言っている。
憐れむ声も聞こえるが、誰も仔猫に手は差し伸べない。
汚いからと近寄ろうともしない。
一松「(あぁ…人ってホント勝手だよなぁ……)」
自分の都合ばかりだ…。
一つ溜め息を吐くと、一松は仔猫に向かって足を一歩踏み出そうとした。
すると…
一松「(え?)」
一松が踏み出すより先に道路に出てきた一人の人物。
紫のネコ耳フードのパーカーを着ている…恐らくは女だろう。
傘もささずズブ濡れの女は仔猫に歩み寄ると暫く仔猫を見つめた後、仔猫の上半身と少し離れた所まで飛んでいた下半身を優しく抱き上げ目の前の公園に入っていった。
通行人2「あの子凄いわねぇ…平然と触るなんて…」
通行人1「勇気あるな〜…」
一松「…………」
一松は暫く女が入っていった方を見つめ後、自分も公園へ足を踏み入れた。