第3章 月夜に舞う花
街灯が多く灯る人の多い大通りから少し外れた公園…
その奥にある池の前で手摺に腕をつき黄昏れる、この男…『松野 カラ松』。
カラ松「フッ、満月か…。聖なる月の光が闇を切り裂き、この俺を照らしだす……」(キリッ
相変わらずイタイ発言を一人で言っているカラ松。
いつもなら此処で暫く黄昏た後真っ直ぐ家にかえるのだが、今日は違った。
フワッ…
カラ松「ん?」
突然風に乗って漂ってきた香り…
カラ松「…いい香りだ…。コレは…花?」
漂ってきた方向に目を向けると、噴水の前に人がいた。
カラ松はその人物の方に向かって歩いて行く。
カラ松「……!!」
近くでその人物を目にし、カラ松は息を呑んだ。
水色の着物を身に纏い、赤い扇子を持って着物の袖を揺らし、月の光に照らされながら優雅に舞う一人の女。
夜の静かな公園に、風と彼女が舞う音だけが響く。
彼女は熱中しているようでカラ松には気付いていないが、伏せられた瞼を縁取る長い睫毛や紅を引いたかのような紅い唇、髪を上げている為チラチラと見える白いうなじや扇子を持つ細くしなやかな指先…
何より気高く美しく…そして力強さを感じる彼女の舞にカラ松は目を奪われた。
…一瞬で彼女の虜になった。
??『ふぅ…あら?貴方は?』
舞い終えた彼女は一息吐くと閉じていた目を開け、漸くカラ松に気付いた。
カラ松「…………」(ポォ〜…
??『……あの』
カラ松「!?…いや、えっと、あの!!」
彼女の呼び掛けにハッとなったカラ松はカッコ付けるのも忘れ、顔を赤くし慌てる。
??『まあ、お顔がとても赤くなっています!大丈夫ですか?お身体の具合が悪いのでは…!!』
真っ赤な顔のカラ松に女はとても心配した様子でカラ松の顔を覗き込む。