第6章 ウェディングブーケ
『…完成。』
残業してようやく企画書が出来上がり、
ふと周囲を見渡すと
事務所に残っているのは
…あれ、俺だけか…
いや、早瀬さんの荷物もある。
一言、声をかけてから帰ろうと
給湯室や会議室を覗きながら
彼女の姿を探していると、
『…ダメ、及川…さすがにここは…
誰かに聞かれたら…どうするのよ…』
『ヤラシイ声、出さなきゃいいじゃん。
でもさ、
こういうシチュエーション、たまんないね。
早瀬みたいな出来る女を会社で犯すって、
スゲー、興奮する。AVみたいで、サイコー…』
資料室から聞こえる声は
間違いなく、早瀬さんと及川徹。
…誰が誰とつきあおうと、
俺は全く興味がない。
でも、この二人って。
及川徹の女性関係を知り尽くしている
早瀬さんが。
あの、切れ者の、早瀬さんが。
なぜ、彼の欲望の相手をするのだろう?