第20章 未来への扉
…ハァッ、ハアッ…
夏希と付き合い始めてから
何度、この道を走っただろう。
俺は今日も、走ってる。
夏希との待ち合わせ場所に向かって。
…連絡はしたけど、
もう、40分、待たせてる。
見えてきた。
あの、公園のカフェ"ランコントル"で、
一人、スマホをいじりながら待つ夏希の姿。
…いつもの姿。
『ごめん、待たせた!』
『お疲れ。』
『お客さんが…』
『ハイハイ、
お客様が遅れてきたか、
打ち合わせが終わらなかったか、
どっちかでしょ?わかってるって。』
そうなんだけどさ。
『我慢、してねーか?』
『…もう、慣れた。』
『ごめんって…あ、ほら、映画、行こう!』
『もう、間に合わないよ。』
『…ごめん。』
『いいって。
DVDになってから、家でゆっくり見る。
それよりさ、お腹すいてない?
このまま、ご飯、食べよ。』
…もともと映画の好みとか違うから
滅多に誘ってこないのに、
珍しく、
『一緒に見に行こう』って声をかけてくれた。
なんか、
外国で賞をとったラブロマンスだったらしい。
ラブロマンスには興味はない。
でも、夏希の誘いなら
一緒に行きたかったんだけどな…
『ほんと、ごめん。
DVDになったら、うちで見ようぜ。
他にもイロイロ借りてさ、
朝までDVD三昧で過ごそう。』
『そんなゆっくり過ごせる日がくれば、ね。』
…言葉の端に、小さなトゲ。
聞かなかった、ふり。
気付かなかった、ふり。
『何、食べようか?
映画、間に合わなかったお詫びに、
今日、俺、ごちそうするし。』
『ホント?じゃあね、
ここで一番高いワインと一番高い料理!』
『マジかー?!』
『ウソウソ(笑)』
…小さなすれ違い、
笑いで済まされるのは
いつまでだろう…