第20章 未来への扉
…一晩で、
世の中の見え方がガラッとかわる。
あのまま駅まで夏希を送り、
俺はそのまま出社した。
見積もりの続きを作ろうと
パソコンに向かう。
昨日までは、
ただの数字の羅列だったのに、
今、見ている同じものは、
全部、"夏希と結婚するために
必要な予算"に見えるのだ。
ゲストは何人くらい、呼ぼうか。
料理はどのランクにしようか。
衣装、何着、着るかな?
これだけじゃないよな。
婚約指輪に結婚指輪に
結納すれば、結納金…
新婚旅行、引っ越し…
他人様の見積もりを作りながら、
頭のなかでは、
俺と夏希の未来を作ってた。
ちゃんと、準備し始めよう。
俺、結婚するなら、夏希と。
『おはよう。』
早瀬が出社してきた。
一応、お礼、言っとかねーとな。
『…ゆうべは、サンキュ。
また、つきあうことになったから。』
『あ、ホント?よかったじゃん!
…勢い、とか
とりあえず、じゃなくて、真剣に?』
『勢いじゃねぇし。
それに、とりあえず、って何だ?
ちゃんと、だよ!
少なくとも俺は、結婚するつもりだから。
超 真剣だ。』
『そっかー。
でも、あんまりゴールだけ見て
つっ走らないようにね。
女子的にはさ、
そこまでの過程を楽しむのが大事だから。』
…なんの話だ?
『バーカ。お前に何がわかんだよ。
あ、もしかして、ヤキモチか?
夏希と俺がさっさとくっついたから
ちょっと悔しい?淋しい?』
『なに、その上から目線!
あたしだって相手、選ぶしっ。
夜久君のことはどーでもいいけど
夏希ちゃんのこと好きだから、
女心がわかんなくなったら、
相談くらいはのるよ。』
いつもの、軽い世間話。
のはずだったけど。
…実際、この後、早瀬には
たっぷり世話になる羽目に陥り。
こうして
俺たちは
結婚への道のりを
歩きだした。