第20章 未来への扉
『…次、何、飲む?』
『あぁ…俺も、白ワインにしよ。
夏希もまだ飲むだろ?ボトルで頼むか。』
…不思議な感じだ。
未成年のうちに別れたから、
夏希と二人、
ワインを飲みながら話す日が来るなんて、な。
『まさか、また会うとは思わなかった。』
『うん、私も。ホントにビックリした。』
『…でも、彼氏、いるんだろ?
俺と…男と、こうやって
二人で会ったりしてて、大丈夫なのか?』
『うん、平気。お互い様だから。』
『…お互い様?』
『彼も、女の人と会ってた。』
『…それって、』
『浮気、されてた。』
『…ホントに、浮気なのか?
考えすぎとか…ほら、仕事の相手ってことは?』
『違う。』
『…見たのか?』
『うん。
私との約束をドタキャンしたその日に、
夜の町で。』
…漫画かドラマみてーな話だな。
『…確かめた?』
『うん、そしたら認めたよ。
会社の子だって。
会社の飲み会で酔った勢いだって、
一回きりだって言ってたけど、違うと思う。
最近、急な残業とか休日出勤で、
デートのドタキャン、よくあったもん。』
『許した?』
それがね、と、夏希が溜息をつく。
『許せない自分の小ささにガッカリ。
許せないのに別れようって言えない
自分の未練がましさにさらにガッカリ。
思ってたより、私、グズグズ悩む
女だったんだな、って。』
『…』
気の効いた答えが見つからなかった。
ハッキリした性格の夏希のことだ。
うやむやにして黙って見過ごす、なんて
出来なかっただろう。
でも、聞いた後に、
相当、後悔もしたはずだ。
浮気した彼。
浮気された自分。
見てしまった自分。
聞いてしまった自分。
許せない気持ちの自分。
別れようと言えない自分。
…彼に対する怒りや失望より、
自分に対する後悔の方が
きっと大きかったはず。
それでも別れてない。
彼を好きだから?
もしそうなら?
どうする?
諦める?
…おい、
俺。
繋ぐ努力、
しなくて
いいか?
リベロ魂、
どこいった?
目の前のチャンス、
見逃して後悔しないか?