第18章 誓いの言葉
『…はい。
3年、向こうで働いてみて
いかに自分が、会社や社長に
守られていたのかを知りました。
…もし許していただけるのなら、
後継者とかそういうのではなく、
赤葦建設の社員の一人として
やり直させて下さい。
それから…あの…』
『なんだ。ハッキリ言わんか。』
『前、俺、
あなたは社長であってうちには父はいない、
…って言いましたけど、あれ、取り消します。
養ってくれて、働かせてくれて、
背中で生き方を教えてくれて、
知らないところで、俺たちを
バックアップしてくれてたのは、
社長じゃなくて、
父としての…あなた、でした。
母さんのことを愛してくれたから、
俺も小春と出会えたし…
社会人としても、父親としても
まだ、学ばせてもらいたいです。
もうしばらく、そばで勉強させてください。』
『…もうしばらく、じゃない。
一生、親の姿を見て学ぶんだ。
衰えていく姿や、
死んだ時、残された者がどうふるまうのか、
その先、いなくなってからわかる存在感も、
親をみて、学ぶんだよ。
それに…
お前はそれでよくても、
小春君の気持ちもあるだろう。
お前の決断は、小春君の人生も
左右するんだからな。』
わ、私?
私は…
『私は…京治さんが決めたことについていきます。』
社長は、
ソファから立ち上がり、
窓際へと歩いていく。
今日も、大きな窓の向こうには
限りなく広がる青空と、
ジオラマのように小さく見える
都会の町並み。
『もし、本気でお前たちが結婚するなら、
小春君、ひとつだけ、
絶対に、誓ってもらいたいことがある。
絶対に、だ。』
…絶対に、誓うべきこと?
なんだろう?
京治さんの顔を見ても
わからない、という表情。
社長は、
窓の向こう側を見ていて、
こちらからでは表情はわからない。
…怒っているのか、
威圧しているのか、
命令されるのか、
無理難題を押し付けられるのか…
わからないけど、
逃げるわけにはいかないから、
覚悟を決めて
身構える。
『あの…なん、で、しょうか?』