第18章 誓いの言葉
何度も
何度も、
抱き合い、
二人とも力尽きる。
汗をかいた体を
シャワーで流しながら
京治さんが言った。
『俺、来週、社長に会ってくる。
3年、仕事もきっちりやったし
日本とも連絡とらなかった。
約束は果たしたから。』
『…どうすることが一番いいのか
私にはわからないけど…』
なぜだろう。
企業人としての決断と
父親としての愛情が入り交じる、
社長の顔を思い出す。
『京治さん…
私、仕事してる京治さんを尊敬してる。
それと同じくらい、
社長のことも尊敬してるし、
京治さんが社長の息子でよかった、とも
思ってるから…』
うまく言えないんだけど、
そう言う私に
ザーッと冷たいシャワーが降り注いだ。
『…もぅっ、冷たい!』
身体中の滴を光らせて
濡れた髪をかきあげながら
京治さんが笑う。
『…ちゃんと伝わってるよ。
よく考えて、冷静に話してくるから
心配いらない。
3年間、離れてたのは…
小春とだけじゃなくて
社長とも、そうなんだ。
俺も、
外で働いてみていろいろ考えたから…
男同士の話、してくるつもり。』
キュ。
シャワーが止まる。
『これまでのいろんなこと、
さっぱり洗い流してやり直す時だよな。
…俺にも、守るものが出来たから、
それがわかる。』
バサッ。
手渡されたのは
大きくて真っ白で
カラリと乾いたあたたかいバスタオル。
今日の京治さんみたいだ。
何でも包んで、吸い込んでくれる。
今までみたいな、
孤独や切なさ、憂いを感じさせない。
あぁ、この人は
会わない間に、
心の涙を流しきったんだな、
それがわかった。
きっとこれから
すごい勢いで何でも吸収し、
今まで以上に男を上げていくんだろう。
…何もかも、
社長の思い描いた通りなのかもしれない。
それを、京治さんもわかっているのかも。
その姿を、支えていきたい。
そばにいれて嬉しい、と思った。
『…ね、久しぶりに、膝枕、しよっか?』
『ううん、今日は…』
裸のまま、
先にベッドに横になる京治さん。
『おいで。一緒に、眠ろう。』
…その腕枕は、
頼もしく、あたたかく、
私を包み込んでくれた。
もう、
母親を求める子供のような
甘えは、ない。
家族を守る、父親のような
深い懐。
…3年。
ちゃんと、意味があったんだ、ね。