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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第18章 誓いの言葉



それから一週間後、
月末付けで、
京治さんは牛島組へ出向となり、
私は退職した。

仕事も住む場所も
自分で探すといった以上、
泣く暇も悩む暇もないほど
毎日、忙しかったのは
却ってありがたかった。

"東京以外"という漠然とした条件で
住む場所を探すのは、
本当に難しくて…

結局、家も仕事も
神奈川に決めた。

暮らし始めたばかりの町は
通勤も仕事も買い物も慣れなくて
毎日がクタクタだった。

そんなとき
繰り返し自分に言い聞かせたのは

『京治さんのこれからの生活は
もっと大変なんだ。』

…ということ。

そもそも、
この街で暮らすことにしたのは
ラクをしないためだった。

埼玉にも千葉にも群馬にも栃木にも
少しづつ知り合いはいる。
だからこそ、やめた。

誰も知らないところで
ゼロからスタートする
京治さんの苦労を
少しでもわかりたくて。

少なくとも、ここは日本。
言葉や食生活で困ることはない。

これからの京治さんに比べれば
こんなことで
"疲れた"なんて言ってられない。


…その京治さんとも
ほとんど会えていなくて、

旅先で撮った写メを
何度も何度も見た。

…あの旅行は
夢だったのではないか、
とすら、思いながら。

それほど、
お互いに忙しかった。



そうしていると、
2か月なんて
あっという間だ。


…出国の日は決まったのかな?


もしかしたら…
もしかしたら、
これが
最後の別れになるかもしれない。


誰か別の相手が出来るかも、
ということだけでなく、
様々な面で安全とは言えない場所。

『私を覚えてて』

…そんな甘ったれた願いではなく、

『とにかく、元気でいて。』

それだけは、伝えたかった。


…こうして考えると、
この別れがどれほど大きなものなのか
改めて実感する。


"待たない"


そんな難しい約束、
私は、実行できるのだろうか。

待つ方が
ずっと出来そうな気がする。


"待たない"


出会ってしまった人を、
愛する人を、待たないって。

どうしてあんな約束、
してしまったんだろう。


見送る時、私は

『行ってらっしゃい』って言える?

『行かないで』って言わない?


…考えれば考えるほど
自信がない。

いっそ、私が知らない間に
行ってしまってくれていたら…

そんなことまで、考える。


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